「商業出版と自費出版」の誰も書かない真実~出版費用篇

自費出版、商業出版、この違いは何でしょう。

たとえばあなたは自分の中に眠る物語を、世界に届けたいという想いはありませんか?

しかし、いざ原稿を完成させても、次のステップで悩む作家は少なくありません。それは

「商業出版と自費出版、どちらを選ぶべき?」

と言うことです。これを知らないと、あなたは自分の想いを本にすることは難しいでしょう。

そこでこのブログでは、商業出版と自費出版の違い、それぞれのメリットとデメリットを、一応著者として、そのどちらへのアプローチした経験があり、同時に現在は編集者として作者側からは分からない「裏の」世界にも精通している私が、赤裸々にお伝えします。

ただ非常に分量が多くなるので、今回は原稿を見せて出版が決定するところまでについて、情報提供したいと思います。

1. 商業出版と自費出版の定義

まず一般的な「定義」をご紹介しましょう。

1.1 商業出版とは

商業出版とは、出版社が企画内容の検討を行い、そして出版を決定した原稿に対して編集を行い、出版経費を負担して書籍を発行する出版形態です。

販売方法は全国に1万店あると言われる書店やAmazonなどのオンライン書店で行われます。書店は正直言ってすでに「本の売れる場所」ではなくなりつつあります。多くの人は本屋で内容を確認しても、実際に買うのはAmazonなどのネット通販、と言うケースが非常に多いです。しかし書店流通は店頭に実物を大量陳列するなど「広告効果」の点では非常に高いものがあります。

1.2 自費出版とは

自費出版とはその名の通り、費用を全部作者が負担して出版する方法です。ですからどのような内容の原稿であろうと、原則としてはどの出版社も問題なく受注するでしょう。

原則として、と言ったのは内容的に反社会的なものである、極端に公序良俗に反している、などあとで刑事責任が発生しそうな場合は、拒否される可能性があるからです。

自費出版で出版社が請け負うのは「出版」だけ、つまり「本」と言うブツを作ることだけです。ですから販売は全て作者が何らかの方法を考えなければなりません。

詳しくは「販売」の項目で書きますが、たとえば同じような自費出版の本だけが出品しているサイトに掲載する、「文学フリマ」などのイベントでブースを数万円で買い、そこで自分で手売りする、書店流通を代行する会社に依頼するなどです。

2 出版が決まるまでの流れ

2.1 商業出版の可否は作品の良さだけでは決まらない

商業出版の場合、まず著者が出版社に企画を持ち込み、編集者が「売れるかどうか」を判断するというのが第一段階です。そこをクリアすると、企画書を書くようにと言われ、出来上がったら企画会議のテーブルに乗るのが第二段階ですす。そしてそこで「売れそうだ」と言うことになれば、出版と言うことになります。

ここで本当の「裏の」話をすると、編集者や企画会議で重視されるのは「その原稿が売れるか」と言う点です。そう書くと当たり前と思われるかもしれませんが、その判断の基準が実に「いやらしい」のです。

「本が売れるかどうか」の判断ですから、当然「その本の内容が読者の興味を惹くものか」と言うことが基準と思うかも知れません。

確かにそれはそうです。しかし、それは「圧倒的に内容が面白い本」の場合だけです。

当然それだけでは出版できる本はごく一部に限られてしまいます。そのような天才作家はなかなかいるものではないからです。

実はその他に「採用の可否」を判断される大きなポイントがあるのです。それは作者が「自分の市場をどれだけ持っているか」と言う点です。

「市場」と言ってもイメージはわかないかも知れませんが、たとえばSNSで何人フォロワーがいるかということです。あるいは、その原稿で扱っているテーマの数千人の会員のいる同好会があって、作者はその一員だ、と言うこともあるでしょう。

あるいはカルチャーセンターでそのテーマにまつわる講座を持っている、と言うことも大きいでしょう。

要は、作者自身のネットワークでどれだけ本が売れそうか、ということが出版の可否をを決める上で非常に大きな要素になる、ということです。

あるいは知り合いに有名人がいて、その人に本を巻く「帯」という紙に推薦文を書いてもらえる、というのも出版社には高く評価されるでしょう。

そして何より大きな問題があります。

それは、出版する上で出版社から作者に金銭負担を求めてくることが非常に多いということです。それはたとえば以下のようなトークで編集者から打診されます。

「企画会議では評判が良かったのでぜひ出したいという方向になったのですが、✕✕さん(作者)はまだ無名なので、売れるかどうかは分かりません。あるいは売るために多少の宣伝を売る必要も出て来るかも知れません。そうなるとうちとしては赤字になってしまう可能性があるので、ちょっと出せないな、と言う話になってしまいます。そこで、ご相談なんですが、✕✕さんの方で、出版費用を一部負担してもらえませんか。ただ、お金を出すということではなく、出版した本の一部を買い取ってもらえませんか。そうすれば上の人間もOKを出すと思うんですが」

ざっとこんな感じです。ですからこれを「著者買取」と言います。

「著者買取」の金額は1000冊印刷する、という前提で話がされる場合は、200万~400万円程度でしょう。

つまりここだけ見れば「自費出版」と変わらないわけです。ただ、自費出版と違って「書店に並ぶ」というメリットがあるのが違いです。

これだけで驚いてはいけません。さらに一部の商業出版社ではもっとあくどいことをしています。それはこの「著者買取」が出版の原価相当である、という出版社もあるのです。

1000冊出版するための、紙代、印刷代、表紙のデザイン費、編集者が校正などをする人件費など費用が「原価」です。これがさほどの200万~400万円で賄えてしまう、ということです。ですから出版社は1円の負担もありません。売れれば売れただけ、出版社の利益になるということです。

もちろん作者には「印税」が入る、と思われるかもしれませんが、それも怪しい話なのです。これはあとで詳しく触れます。

2.2 自費出版なら大丈夫?

自費出版は最初から全額作者が負担する方法ですから、ここでは一般的には、作者が原稿を持ち込み、この分量の原稿を、このような体裁で、何冊出したい、と希望を言えば、自動的に金額が出てきます。ですから何社かの合い見積もりを取って、一番安いところにすればいい、ということです。

ごく標準的な金額で言うと、費用は1000冊印刷でだいたい200万~500万円でしょうか。

しかしここでも、商業出版ほどブラックではありませんが、作者が注意しなければならない点があります。

それは1冊の本でも「仕上がり」によって費用が異なる、という点です。

たとえば印刷する紙でも厚さや紙としての質感の良さなどによって費用が違います。表紙も硬い厚紙を使った本(ハードカバーと言います)と洋書や新書のように、中身の紙よりは少し厚いですが基本的には柔らかい表紙の本(ソフトカバーまたはペーパーバックと言います)とでは、全く本としての「出来」が異なります。当然、立派に見えるハードカバーの方が費用は上がります。

ほかにもいろいろな点で、本はお金を掛けようと思えばいくらでも掛けられます。逆に言えば安くしようとすればかなり安くできます。

つまり複数の自費出版社で合い見積もりを取ったとしても、その辺りの「仕様」が一緒でなければ、見積もりの比較はできないということです。具体的には安い見積もりを出してきた自費出版社に頼んだら、ペラペラの表紙で、本文の用紙もザラザラした週刊誌のようなものだった。表紙も、ただタイトルが書かれたものだった。といった「サギ」とは言い切れない「サギ」が発生する危険性があるのです。

特に作者がお金持ち風の、今年で喜寿だから記念に自叙伝を出したいなどという「マダム」の場合は、自費出版社は「出版の知識も、合い見積もりの方法も知らないだろうから、見積もりは通常のレベルで出して、実際は粗悪な仕上がりにして、儲けを大きくとってやろう」と考える可能性もあるので、非常に注意しなければなりません。

ですから合い見積もりを出す場合は「印刷一式 100万円」というようなものを出してくる出版社は要注意です。このような見積もりの場合は、項目別に全部仕様が分かるような見積りを要求しましょう。つまり、「用紙(コート90kg)」といったようなものです。これは「コート紙」というつるつるした紙で、「四六判(しろくばん)」という原紙が1,000枚のときの重さ(kg)が90kg、という意味です。これが120kgになれば、紙が厚くなったということです。

ちなみに「四六判」とは一番よく書籍に使われる本のサイズです。具体的には、幅129mm✕縦188mmです。

ですから合い見積もりを取る場合は、まず原料の表紙用の紙、本文用の紙、表紙のデザインの有無と料金を取る場合どのレベルのものができるのか、ハードカバーにした場合、表紙をめくった時に表紙の裏に貼り付いている「きき紙」の有無など、非常に細かい項目まで全て指定して3社なら3社の合い見積もりを取らないと、意味がないということです。

それが素人なので難しい、という場合は1冊自分の希望の仕上がりの、実際に販売されている本を自費出版社に見せて「これと同じもの」といって見積もりを取ることが次善の策でしょう。

いかがですか。

商業出版、自費出版とも出版までのお金の段階で、ここまで注意する点があるのです。

もしもダマされてもいい、というお金持ちであれば別ですが、コツコツ貯めたお金の中から出すということであれば、少なすぎる出版費用はそれはそれで注意が必要ですが、しっかり内容を知った上で商業出版にしろ、自費出版にしろ決める必要があるでしょう。

ちなみに私(丹波)も最初は作者側にいました。それで出版してくれるところを探す中で上に書いたような「ブラックな部分」を親というほど味わったので、「これは人に任せるくらいなら自分で出版した方がいい」と思って、COW AND CATという出版社を設立しました。そして、世の中にもこのような出版社の罠に知らずにはまって、大損をしている作者の方がたくさんいるだろうから、そういう被害者をできるだけ救いたい、と思って「料金は完全ガラス張り」「最低料金5万円から」という出版サポートを始めたのです。

では今日はこの辺にしておきます。

次回は、「自費出版の闇」をまだ描き切れていないのでその点と、出版が決まって原稿を書き校正刷りができるまでの、商業出版と自費出版の違いについてお伝えしようと思います。

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