電子書籍を出版しようと思った時に知っておくべきポイント
電子書籍とは?紙の書籍との違い
電子書籍とは、デジタル形式で提供される書籍のことを指します。コンピュータ、タブレット、スマートフォン、専用の電子書籍リーダーなどで読みます。物理的な形がないため、持ち運びが便利であり、場所を取らないという特長があります。また、電子書籍は検索やリンクを活用して、情報を迅速に探し出すことが可能です。
電子書籍と紙の書籍の将来性
1. 世界全体の売上トレンド
電子書籍:
- Statistaのデータでは2023年の世界の電子書籍市場規模は約194億ドル。2020年の約170億ドルから順調に成長を続けています。
- Grand View Researchのレポートは電子書籍市場は2021年から7年間で年6.1%成長すると予測しています。
紙の書籍:
- NPD BookScanはアメリカの紙の書籍売上は2021年に約7億5000万冊。前年比で9%増加したと述べています。
- しかし、2022年のデータでは、売上が前年と比較して若干の減少を示しています。これは、パンデミックによる一時的な読書ブームの反動とされています。
2. アメリカの売上トレンド
電子書籍:
- Publishers Weeklyはアメリカの電子書籍は前年比▲4.2%(2022年)。約10億ドルだったとしました。これは、パンデミックで伸びた異常値の調整と考えられています。
- 2023年に入ってからは、安定的な成長に戻りつつあります。特に、自己啓発書やビジネス書の電子書籍が好調です。
紙の書籍:
- Association of American Publishers (AAP)のデータは、2021年の紙の書籍の売上が約265億ドル。前年比で6.2%増加しました。
- 2022年には紙の書籍の売上は約260億ドルとなり、前年比でわずかに減少しましたが、依然として堅調な売上を維持しています。
3. イギリスの売上トレンド
電子書籍:
- The Publishers Associationは、イギリスの電子書籍市場は2021年に約4.3億ポンド(約5.4億ドル)。前年比で3%増加しました。
- 2022年には若干の減少、しかし2023年は再び成長を見しています
紙の書籍:
- 同じくThe Publishers Associationのデータによると、2021年の紙の書籍の売上は約31億ポンド(約39億ドル)で、前年比で5%増加しました。
- 2022年には売上が横ばい状態でしたが、読者の紙の書籍への関心は依然として高いです。
4. 日本の売上トレンド
電子書籍:
- **電子出版制作・流通協会(EBJ)**のデータによると、2022年の日本の電子書籍市場規模は約4000億円(約3.7億ドル)で、前年より約20%増加しています。
- 日本の電子書籍市場は特に漫画の需要が高く、全電子書籍市場の約70%を占めています。
紙の書籍:
- 出版科学研究所のデータによると、2022年の日本の紙の書籍の売上は約1.25兆円(約11.5億ドル)で、前年比で約2.6%減少しました。
- コロナ禍の影響で一時的に増加した読書需要が落ち着きつつありますが、特定ジャンル(ビジネス書、自己啓発書)の売上は堅調です。
これらのデータから、電子書籍市場は成長傾向にあるものの、紙の書籍も依然として重要な市場であることがわかります。日本においても、特に漫画の電子書籍の需要が高く、両者の売上トレンドは国やジャンルによって異なることが確認できます。
電子書籍のメリットとデメリット
メリット:
- コスト削減:印刷費や流通コストがかからないため、制作費を抑えることができます。
- 迅速な出版:校了後すぐに出版が可能で、紙の書籍に比べて出版までの時間が短縮されます。
- 持ち運びの便利さ:何百冊もの本をデバイス一つで持ち運べるため、いつでもどこでも読書が楽しめます。
デメリット:
- デジタルデバイスの必要性:電子書籍を読むためにはデジタルデバイスが必要で、デバイスの充電や管理が求められます。
- 著作権侵害のリスク:デジタル形式はコピーや配布が容易であるため、著作権侵害のリスクが高まります。
- 視覚疲労:長時間のスクリーン読書は目に負担をかけることがあります。
電子書籍の将来性と読者ニーズの大きなコンテンツとは
電子書籍は、技術の進化とともにさらなる普及が見込まれています。特に以下の理由から、将来性が高いと考えられています。
- 環境への配慮:紙の消費を抑えることができ、環境に優しい選択肢です。
- アクセスの容易さ:インターネットを通じて世界中どこからでも購入・閲覧が可能です。
- インタラクティブな機能:マルチメディアコンテンツやインタラクティブな要素を取り入れた電子書籍が増えており、読書体験が向上しています。
読者のニーズに適合する電子書籍のテーマ設定
1 短時間で消費できるコンテンツの人気
理由
- Global Web Indexのレポートによると、現代の読者は忙しい生活を送っています。従って短時間で読めるコンテンツや要約された情報を求める傾向があります。特に通勤時間や休憩時間などに手軽に読める形式のコンテンツが人気です。
- Mediumなどのプラットフォームでの短編記事やブログの人気も、このトレンドを反映しています。
2. 自己啓発やスキルアップに関するコンテンツの需要
理由
- NPD Groupのレポートでは、キャリアアップやライフスタイルの向上を目指す読者が増えています。
- Amazonのベストセラーリストでも、自己啓発やビジネスに関する書籍が上位です。
3. 多様性と包括性に関するニーズ
理由
- Deloitteの調査によると、現代の読者は多様性と包括性を重視する傾向があります。特に若い世代は、異なる文化や背景を持つ登場人物や作者の作品を好む傾向が強いです。
- Publishers Weeklyのレポートでも、多様な視点や背景を持つ著者の作品が注目されていることが示されています。
4. インタラクティブでマルチメディアなコンテンツのニーズ
理由
- Pew Research Centerの調査では、電子書籍やデジタルコンテンツにおいて、動画や音声などのマルチメディア要素を取り入れたインタラクティブなコンテンツが人気を集めていることが示されています。
- Apple BooksやAmazon Kindleでも、マルチメディア対応の書籍が増加しており、読者のニーズに応えています。
電子書籍だけを出版する方法3選
電子書籍をマージンを払って販売する方法
Amazon Kindle Direct Publishing (KDP):
- 概要:Amazonが提供するセルフパブリッシングプラットフォームで、世界中の読者にリーチできます。
- 特徴:無料で出版可能。ロイヤリティは70%。
- 手順:アカウント作成 → 書籍情報の入力 → 原稿のアップロード → 表紙の作成 → プレビューと公開。
Kobo Writing Life:
- 概要:Rakutenが提供するプラットフォームで、幅広い国際的な市場に対応しています。
- 特徴:簡単な出版プロセスと広範な販路。
- 手順:アカウント作成 → 書籍情報の入力 → 原稿のアップロード → 表紙の作成 → プレビューと公開。
Google Play Books Partner Center:
- 概要:Googleが提供する出版プラットフォームで、Google Playを通じて販売できます。
- 特徴:Googleの検索機能と連携し、広範なリーチを持つ。
- 手順:アカウント作成 → 著者情報と書籍情報の入力 → 原稿と表紙のアップロード → プレビューと公開。
電子書籍をマージンを払って販売する方法:
- Project Gutenberg:著作権が切れた古典作品の配信が中心。
- Smashwords:無料でも有料でも出版可能で、広範な配信網を持つ。
- ManyBooks:自費出版を含む無料書籍が多く、読者へのリーチが可能。
紙の書籍を出版し、書店で流通させる費用
電子書籍を出版する費用
電子書籍の出版費用は以下の要素別に挙げられます。
- 原稿執筆:執筆自体には費用がかかりませんが、プロの編集者や校正者を雇う場合、費用が発生します。編集費用は約10万円から30万円程度です。
- 表紙デザイン:プロのデザイナーに依頼すると、5万円が相場です。
- フォーマット変換:電子書籍フォーマット(ePub、Mobiなど)への変換費用は、1万〜2万円程度です。
- マーケティング:広告費用やプロモーション費用はその内容にもよりますが、10万円~300万円はかかります。
総費用:以上のトータルで、電子費用の総費用は宣伝にそれだけ投資するかにもよりますが、おおよその例で言うと約40万〜350万円が一般的です。
紙の書籍を出版する費用
紙の書籍の出版費用は、以下の要素別に挙げられます。
- 原稿執筆:電子書籍と同様、プロの編集者や校正者を雇う場合、編集費用は約10万円から30万円程度です。。
- 表紙デザイン:5万円が相場です。
- 印刷費用:部数に依存しますが、1000部印刷する場合、何の装飾もしなければ100万円程度で可能です。しかしタイトルを金の判で押したようにするなどの加工を売れると、300万円程度まで上がります。。
- 流通・販売手数料:書店に配本するための手数料や流通コストが含まれます。これも印刷部数や各書店との直接取引か、日販などの書籍専門の卸会社を通す場合で大きく異なります。前者の平均で流通チャネルにもよりますが売上の10~20%、後者の場合で売上の40%%が一般的です。
- マーケティング:これもピンからキリまでです。口コミだけであれば0円ですが雑誌、新聞、インターネットなどの全てでアプローチすれば500万円以上になるでしょう。
総費用:出版だけならトータルで約100万円ですが、書店流通に載せるのであれば400~500万円が一般的です。
有料サイトを通した場合のマージン
電子出版した本を販売した場合、ロイヤリティを取られる場合ととられない場合があります。ですからその点はよく考えて選びましょう。サイト別の費用の概算は以下の通りです。
Amazon Kindle Store
- 出版費用:無料。
- ロイヤリティ:35%または70%(価格帯や配信地域により異なる)。
- その他の費用:配送コスト(1MBあたり0.15ドル)がかかる場合があります。
Rakuten Kobo
- 出版費用:無料。
- ロイヤリティ:70%(定価が150円以上の場合)、45%(定価が150円未満の場合)。
- その他の費用:特にありません。
Apple Books
- 出版費用:無料。
- ロイヤリティ:70%。
- その他の費用:特にありません。
電子書籍に相応しいテーマ
電子書籍というメディアの持つメリット
1 インタラクティブ機能:
- 電子書籍には動画、音声、などのインタラクティブな要素を組み込めます。それは学習体験を豊かにします。
- ハイパーリンクや検索機能により、読者は必要な情報にすぐにアクセスできます。
2 コスト削減:
- 印刷や物流のコストがかからないため、紙の書籍よりも価格を抑えることができます。
- 更新や改訂が必要な場合、電子書籍は容易に改訂版をリリースできます。従って常に最新の情報を提供することができます。
3 環境への配慮:
- 紙を使用しないため、環境に優しい選択肢として評価されています。特に教育機関では、環境への配慮が重視されることが多いです。
読者ニーズから電子書籍が求められる
1. 自己啓発・ビジネス書
根拠
高い需要
自己啓発やビジネスに関する書籍は、特に電子書籍市場で非常に人気があります。多くの読者が自己改善やキャリアアップを目的としてこうした書籍を求めています。
携帯性
自己啓発やビジネス書は、読者が通勤などの隙間時間に読むことが多いです。そのためスマートフォンやタブレットで読む電子書籍と相性が良いです。
更新の容易さ
電子書籍は簡単に内容を更新できます。ですから最新の情報やトレンドを反映させることができます。
実績
- NPD Groupは、自己啓発書やビジネス書の売上増加を報告しています。特にキャリアアップやライフスタイルの向上を目指す読者が増えています。
- Amazonのベストセラーリストでも、自己啓発やビジネスに関する書籍が上位です。
2. フィクション(特にライトノベルやSF)
現代人は集中して、知識を得るために読書をすることは少ないです。むしろ短い時間の暇つぶしに、頭をリラックスさせる目的で読書をする傾向が高いです。そのような読書には短時間で消費できるコンテンツが適しています。フィクション、それも「ラノベ」と呼ばれる「ライトノベル」やSFが人気です。
根拠
若年層からの支持
電子書籍は若年層に人気があり、特にライトノベルやSFが支持されています。これらのジャンルはデジタルフォーマットでの消費が進んでいます。
シリーズ物の強み
フィクションのシリーズ物は、読者が続編を次々と購入する傾向があります。その点電子書籍ではシリーズ全巻を一度に揃えることが容易です。
グローバルな市場
電子書籍は国境を超えて販売できるます。従って日本のライトノベルやSFは海外市場でも人気が高まっています。
- Global Web Indexのレポートは、現代の読者は忙しいと指摘しています。ですからすぐ読める、要約されているコンテンツが求められていると言います。特に通勤時間や休憩時間などに手軽に読める形式のコンテンツが人気です。
- Mediumなどの短編記事やブログの人気も、このトレンドを反映しています。
3. 教育・専門書
AIで将来仕事がなくなる、という危機感を特に若いビジネスパーソンが持っています。彼らはAIに奪われないスキルを得る「リスキング」用の専門書を読む傾向が高くなっています。また年齢関係なく「転職」への抵抗感がなくなり、キャリアアップできるようにスキルを身に付ける人も増えています。
その結果、教育・専門書のニーズが高まっています。
根拠
- Statistaの調査によると、世界中の電子書籍の売上は2019年から2024年の間に持続的に増加しています。その主な理由の一つとして読者の「利便性」が挙げられています 。
- Pew Research Centerの調査では、アメリカの成人の約30%が電子書籍を読んでいます。その多くが「持ち運びの容易さ」を理由に挙げています 。
- Education Weekのレポートによれば、電子教科書の使用は増加しています。特にインタラクティブな機能が学生の学習効果を高めるとされています 。
- Journal of Educational Technology & Societyに掲載された研究は以下の通りです。インタラクティブな電子教材が学生の理解度や学習意欲を向上させます。
- Green Press Initiativeのデータは以下のように述べています。電子書籍は紙の書籍に比べて環境への負荷が低く、特に森林資源の保護に寄与することが報告されています 。
- Environmental Paper Networkのレポートでも、電子書籍が持続可能な出版方法として評価されています 。
- 学生や専門職の人々は、移動中や隙間時間に勉強や調査を行うことが多いです。電子書籍は軽量で持ち運びが容易なため、どこでも学習が可能です。
- 教材を大量に持ち運ぶ必要がなく、一台のデバイスで多数の書籍や資料にアクセスできることが魅力です。
まとめ
いかがですか。
このように物理的側面からも、読者のハード的なニーズからも、そしてソフト的なニーズからも電子書籍は高い将来性を持ったメディアだと言えます。ですからこれから本を出版するのであれば、ぜひ電子書籍を考えましょう。
ただし、電子書籍「だから」売れるわけではありません。多くの人に読んでもらうためには、コンセプト設定、テーマ設定、構成などをしっかり考える櫃必要があります。これは紙の書籍でも同じです。ですから、原稿を書く前にその点についてしっかり考えることが、書籍出版の基本の「き」です。
もしもそのような本づくりの基本から誰かに相談したい、プロのアドバイスが欲しい、という場合はぜひ 私たちクリエイティブ集団COW ANT CAT にご相談ください。出版のプロがあなたの「表現したいこと」をどのような形にするのが最適か、ということを一緒に考えます。また費用も完全ガラス張りなので、明快であり、最低5万円から承ります。紙の書籍を出版する場合であってもその価格は同様です。つまり紙の書籍と電子書籍を同時に5万円で出版する、ということです。(詳しくはこちらをご覧ください)
悩んでいる方はぜひ こちら からご連絡ください。ご相談だけであれば無料ですので、納得がいくまでご説明します。