「構成」の作り方~「商業出版で売れる原稿」の書き方❷

テーマを主張するには構成が重要

テーマを論理的に示し、納得させるためには構成が重要

テーマは素材、構成は料理法

いくら良いテーマができても、それを論理的に読者に示しないとしたら?納得を得られないとしたら?あなたの主張や提案は受け入れてもらえませんよね?そのために必要なことがしっかりした構成を考えることです。

つまりテーマは料理で言えば素材です。いくら良い素材でも、おいしい味付けをしなければ相手は美味しいと思ってくれません。ですから「構成」という料理法をしっかりさせましょう。それが素材の良さを伝えることができるコツなのです。

構成には色々なパターンがあります。同時に慣れてくれば自分で読者心理を想定しながら作ることも十分可能です。最終的にはオリジナルを目指しましょう。オリジナルな構成はテーマをより引き立てます。その結果あなたの原稿はよりオリジナルな物語や論文、エッセーになるでしょう。

しかし最初からオリンピックを目指してもダメです。目標が高すぎて、どこから手を付ければいいのか分かりません。また上手く行かなくて文章を書くモチベーションが下がってしまう危険性もあります。

最初は古典的な構成パターン「起承転結」を利用しよう

そのため、最初は古典的に用いられている構成パターンを使用することをお勧めします。古くから用いられていると言う理由は1つです。その構成に読者の興味を惹きつつ納得感と満足感を与える非常に優れたものだからです。その具体的な古典的な構成パターンはよく知られた「起承転結」です。

「起承転結」は、日本の古典的な物語や文章において広く用いられてきた構成法です。その起源と歴史的背景には深い文化的・文学的な背景があります。以下に「起承転結」の構成の誕生と発展について説明します。

「起承転結」の歴史的背景と経緯

1. 古代中国の影響

「起承転結」の構成は、中国古代の文学や演説のスタイルから影響を受けています。古代中国の文章や演説では、論理的な展開や説得力が要求されます。ですから明確な構成が重要視されていたのです。例えば、古代中国の詩や文書に見られる「起承転結」の要素は、文章を論理的に整理するための手法として発展しました。

2. 日本の文学と演説

日本においても、中国の影響を受けた文学や文章の構成法が取り入れられました。特に平安時代の文学や物語では、「起承転結」の要素が見られます。物語の序章(起)で登場人物や設定が紹介され、物語が展開する過程(承)、物語がクライマックスに達する部分(転)、そして結末(結)で締めくくるという形が取られました。

3. 古典文学での利用

「起承転結」の構成は、日本の古典文学、特に物語や詩において非常に重要な役割を果たしました。例えば、平安時代の物語文学(『源氏物語』など)では、物語の構成に「起承転結」の要素が自然に組み込まれており、読者や聴衆に対して明確な物語の流れを提供しました。

  • 起(起): 物語の始まりや登場人物の紹介
  • 承(承): 物語の展開や問題の発生
  • 転(転): 物語のクライマックスや意外な展開
  • 結(結): 物語の解決や結末

4. 現代における「起承転結」の活用

現代においても「起承転結」は、小説、エッセー、論文、プレゼンテーションなどさまざまな形式で活用されています。特に日本の文章やスピーチにおいては、聴衆や読者にわかりやすく、説得力のあるメッセージを伝えるための効果的な手法として使われています。現代のメディアやビジネス文書においても、この構成法は読者の関心を引き、情報を整理して伝えるために利用されています。

5.「起承転結」の構成法の効果

「起承転結」という古典的な構成が優れている理由は、読者の心理の変化に対応しながら、物語や論理の展開をスムーズに進めることができる点にあります。この構成法は、段階的に読者の関心を高め、驚きを提供し、納得のいく結末に導くという、心理的に効果的な流れを持っています。

そのために「起承転結」は、古代中国から日本の古典文学に至るまで、歴史的な背景と文学的な発展を経て現代に至るまで用いられて来ました。明確で効果的な情報伝達を実現するための手法として、多くの文芸作品や実用文書で利用されてきました。具体的には以下のメリットがあります。

  • 明確な構造: 読者や聴衆に対して、物語や論理の流れを明確にし、理解しやすくします。
  • 興味を引く: 意外な展開や新しい視点を提供し、読者の興味を引き続けます。
  • 納得感を与える:納得感のある締めくくりを行い、読者に強い印象を残します。

ですから最初のうちは構成は「起承転結」に沿って考えましょう。

「起承転結」パターンを使った構成の作り方

1. 「起」

「起」の目的は読者の注意を引くこと

最初の「起」の段階では、読者にテーマや問題を提示し、物語や議論の出発点を明確にします。ここでは、読者が理解しやすい状況設定や、関心を引くフックが用いられます。

正しい「起」のもたらす心理効果

人間は新しい情報を受け取るとき、その情報が自分に関連があるかどうかを瞬時に判断します。「起」の部分でテーマや問題が明確に提示されることで、読者は「これは自分に関係がある」「これは興味深い」と感じ、続きを読みたいと思います。

正しい「起」のパターン

具体的には「短くて印象的な情報を最初に読者に与えること」が重要です。それは以下のようなものです。

短いが印象的な導入とは、文章の冒頭で読者の興味を強く引き、続きを読みたくなるような内容を簡潔に伝えることです。この導入部分は、読者に「もっと知りたい」と思わせる効果があり、記事や本全体の印象を左右します。具体的には以下のような方法があります。

1. 驚くべき事実や統計
  • : 「世界中で毎分20,000人以上が新しいブログを開設しています。それでも、成功するのはそのうちのわずか0.01%だけです。」
  • 効果: 読者は驚き、なぜそうなのか、どうすれば成功できるのか知りたくなります。
2. 挑発的な質問
  • : 「あなたは本当に今のキャリアに満足していますか?」
  • 効果: 読者は自身に問いかけ、考え込むことで、答えを知りたくなり読み進めます。
3. パーソナルな逸話やストーリー
  • : 「5年前、私は自分のビジネスが失敗するとは夢にも思っていませんでした。だが、たった一つのミスが全てを変えたのです。」
  • 効果: 読者は感情移入し、その後の展開に興味を持ちます。
4. 衝撃的な結論をほのめかす
  • : 「成功するための秘訣は、実は『努力しないこと』かもしれません。」
  • 効果: 読者はその逆説的な主張に驚き、その理由を知りたくなります。
5. 未来を予測する声明
  • : 「5年後には、今の仕事が存在しないかもしれません。」
  • 効果: 読者は未来に不安や好奇心を抱き、続きを読んで将来に備えたくなります。
6. 視覚的で具体的な描写
  • : 「真夜中の都会、霧に包まれた道を歩くと、一つの古びたドアが目に留まりました。中に入ると、私の人生は180度変わりました。」
  • 効果: 視覚的なイメージが読者の想像力を刺激し、その後の物語に引き込まれます。

「起」のまとめ

短くても印象的な導入は、読者の関心を一瞬で掴む力を持っています。重要なのは、読者の感情や好奇心を刺激し、すぐに続きを読みたくさせることです。このような導入を使うことで、文章の冒頭から読者を強く引きつけることができ、最後まで読み続けてもらえる可能性が高まります。

2. 「承」

目的は読者の理解を深め、共感を引き出すこと

「承」の段階では、提示されたテーマや問題が展開され、詳細な説明や背景情報を提供します。ここで物語が深まり、論理が発展します。

正しい「承」のもたらす心理効果

人間は物事を理解するとき、背景や詳細な説明があると納得しやすくなります。「承」の部分で物語や議論が展開されることで、読者はより深くテーマに入り込み、共感や理解を深めます。読者は「この展開はどうなるのだろう」と興味を持ち続け、次の段階へと進みたくなります。

正しい「承」のパターン

「承」の段階で背景や詳細な説明を行う際には、読者の理解を深め、納得感を得るためにいくつかのポイントに留意することが重要です。

1. 情報の関連性を確保する
  • 留意点: 提供する背景や詳細な情報は、テーマや論点に直接関係があるものに限定する必要があります。読者は関係のない情報には興味を持たないため、無駄な情報は混乱を招き、集中力を削いでしまいます。
  • 方法: 各情報がどのようにして主題に結びつくのかを明確にし、読者が容易に関連性を理解できるように説明します。
2. 段階的に情報を展開する
  • 留意点: 情報は一度に大量に提供するのではなく、段階的に展開することが重要です。これにより、読者は徐々に理解を深めることができ、情報過多による混乱を避けることができます。
  • 方法: 基本的な情報から始め、次に詳細や例、補足的な情報を追加する形で展開します。情報が重なる部分では、前の段階での内容を簡潔に振り返りながら進めると、読者の理解が助けられます。
3. 具体例を用いる
  • 留意点: 抽象的な説明だけでは、読者がイメージをつかみにくく、理解が浅くなりがちです。具体例を挙げることで、読者は説明されている内容を実生活や経験に結びつけて理解しやすくなります。
  • 方法: 理論や概念を説明した後に、それを実際に当てはめた具体例を示します。例としては、物語の一節、データのグラフ、実際のビジネスケースなどが挙げられます。
4. 論理的なつながりを強調する
  • 留意点: 読者は論理的な展開を求めています。各段階での情報がどのようにして次の情報につながっているのか、明確にすることが重要です。そうすることで、読者は納得しやすくなります。
  • 方法: 適切な接続詞や、前の部分との関係性を示すフレーズを使い、読者が論理的に情報を追えるようにします。例えば、「その結果」、「それにより」、「このようにして」といったフレーズを用います。
5. 反対意見や疑問に先回りして答える
  • 留意点: 読者は提示された情報に対して疑問や反対意見を持つことがあります。これに対処しないと、読者は納得感を得られないまま、興味を失う可能性があります。
  • 方法: よくある反対意見や疑問を予測し、それに対する回答をあらかじめ用意しておきます。これにより、読者は疑問点を解消でき、説明に納得感を持つことができます。

「承」のまとめ

「承」の部分で背景や詳細な説明を効果的に行うには、情報の関連性を確保し、段階的に展開し、具体例を使い、論理的なつながりを強調することが大切です。これらを実践することで、読者は自然に納得感を持ちながら内容を受け入れ、次の段階へと進みやすくなります。

3. 「転」

目的は読者に驚きを提供し、注意を再集中させること

「転」の段階では、物語や論理を読者が予期しない方向へ転じさせます。これにより、読者は驚きやより内容に集中して読むことをになります。

「転」の心理効果

人間は予想外の出来事に対して強く反応します。「転」の部分で物語や議論が予期しない方向に進むと、読者は「そんな展開になるとは思わなかった!」と驚き、再び注意を集中させます。この瞬間に、読者の興味は再び高まり、結末を知りたくなるのです。

予期しない方向に転じさせる、というのはかなり高いスキルや、練り込んだ論理展開を考えておく必要があります。具体的にな例を挙げるとすると以下のようなことです。

正しい「転」のパターン

「転」の事例

「転」は独立しては成立しません。必ず「起」で伏線を忍ばせておき、それを「転」で明らかにすることが重要です。具体的には以下のような例です。

「起」:

  1. テーマ: 「オンライン教育が学生の学習成果を向上させる」
  2. 主張: 「オンライン教育は学生に柔軟な学習環境を提供し、学習成果を向上させる」
  3. 背景: 「オンライン教育の普及が進み、多くの教育機関が導入しています。」

「転」:

  1. 反対意見: 「しかし、最近の調査では、オンライン教育が学生の学習成果を必ずしも向上させていないというデータもあります。」
  2. 意外なデータ: 「ある研究によれば、オンライン教育が対面授業に比べて学生のモチベーションやエンゲージメントを低下させることがあるとされています。」
  3. 前提の再評価: 「オンライン教育が必ずしも全ての学生にとって効果的とは限らず、学習スタイルや科目によって結果が異なることが示されています。」

上手に「転」を構成にいれるには

つまり以下ような「起」と「転」の関係を作れるように構成を考えることです

  • 「起」: 基本的なテーマや主張、背景情報を提供し、読者にわかりやすい枠組みを作る。
  • 「転」: 予想外の反対意見や新たなデータを提示し、「起」での主張を再評価することで、意外性を演出する。

4. 「結」

目的は全体のテーマや問題を解決させ、読者に安心感や満足感を与えること

「結」の目的は全体のテーマや問題を解決させ、読者に安心感や満足感を与えることです。つまり「大団円」で、読者の疑問は解決し、物語は納得できる形で終息するのが「結」です。

「結」のもたらす心理効果

人間は物語や論理が完結し、秩序が回復されると安心します。「結」の部分でテーマや問題が解決されることで、読者は「なるほど、そういうことだったのか」と納得し、満足感を得ます。また、適切な結末は、読者にとってその作品や文章が心に残る要素となり、深い印象を与えます。

それはその著者のほかの作品も読んでみたいというモチベーションを喚起させます。

「結」の重要な役割とそのためのスキル

しかし「起」で述べた内容を「転」で一旦否定していますから、「結」でまとめるにはスキルと論理的説得力が必要です。具体的には「結」の段階で「起」で述べたことと「転」で述べたことの差異や矛盾をまとめる必要があります。

そのためには「結」では以下のステップに従って整理し、結論を導くことが重要です。具体的な方法と例を示します。

1. 主要な点を再確認する

「結」の段階では、まず「起」と「転」で述べた主要なポイントを再確認し、どのような差異や矛盾が存在するかを整理します。これにより、読者がこれまでの議論を把握しやすくなります。

具体例:

  • 「起」: 「オンライン教育が学生の学習成果を向上させる」と主張した。
  • 「転」: 「オンライン教育が必ずしも学習成果を向上させないというデータがある」と指摘した。
2. 差異や矛盾を分析する

差異や矛盾がどのように生じたのかを分析します。これにより、異なる視点やデータがどのように結びつくかを説明します。

具体例:

  • 差異の分析: 「オンライン教育の効果が異なる理由として、学習スタイルや科目の違いが考えられる。特に自律的な学習が求められる科目では、オンライン教育が効果的でない可能性がある。」
3. 統合的な見解を提示する

「起」と「転」で述べた情報を統合し、全体としての見解を示します。これにより、論点が明確になり、結論が一貫性を持つようになります。

具体例:

  • 統合的な見解: 「オンライン教育が全ての学生にとって有効であるとは限らないが、特定の条件や学習スタイルにおいては非常に有効である。したがって、教育機関は学生のニーズに応じて教育方法を柔軟に調整する必要がある。」
4. 結論を強調する

最終的な結論を明確にし、読者に強い印象を残します。この結論は「起」と「転」の内容を踏まえた上での総括的な意見や提言となります。

具体例:

  • 結論の強調: 「オンライン教育は現代の教育において重要な役割を果たすが、その効果は一様ではない。教育機関は学生の多様なニーズに応じて、オンライン教育の導入を検討する際には慎重なアプローチが必要である。」

具体的な構成例

以上の「起承転結」のそれぞれの段階の留意点に沿った場合、どのようになるか例を示します。

「起」:

  • テーマ: 「オンライン教育の学習成果への影響」
  • 主張: 「オンライン教育は学生の学習成果を向上させる」
  • 背景: 「オンライン教育の普及により、多くの教育機関が導入している」

「承」

  • テーマ: 「オンライン教育の学習成果に関する具体的な要因と影響をテータで示す」
  • 主張: 「オンライン教育は確かに学習成果を向上させている」
  • 根拠: 「今後、教育だけではなく企業内研修でもオンライン教育を積極的に取り入れていくべきである」

「転」:

  • 反対意見: 「しかし、最近の調査では、オンライン教育が必ずしも学習成果を向上させるわけではない」
  • 意外なデータ: 「一部のデータは、オンライン教育が学生のエンゲージメントを低下させる可能性があることを示している」
  • 前提の再評価: 「オンライン教育の効果は、学習スタイルや科目によって異なる」

「結」:

  • 差異や矛盾の分析: 「オンライン教育の効果が異なる理由には、学習スタイルや科目の違いがある。特に自律的な学習が求められる場合、オンライン教育の効果が限定される可能性がある。」
  • 統合的な見解: 「オンライン教育は全ての学生にとって有効であるわけではなく、特定の条件において効果を発揮する。教育機関は学生のニーズに応じた柔軟な教育方法を導入するべきである。」
  • 結論の強調: 「オンライン教育は現代教育において重要な要素であるが、その効果は一様ではない。教育機関はその利点と限界を理解し、慎重に導入する必要がある。」

このように、「起」と「承」でテーマの最重要テーマを主張します。その上で「転」でその反論を読者に代わって、ほかの主張も存在することを示します。そして最後の「結」で「起」と「転」の内容を整理し、差異や矛盾を分析し、それらを統合した統合的な見解を提示します。そこではテーマとなる主張とその反論も納得させた「強化された主張」が示されます。これにより、論文やエッセーの内容の説得力が増し、物語のテーマが強調され、読者に対する説得力と読後の納得感を増すことができます。

まとめ

構成がテーマを納得感のあるものにする

「書くべきテーマ」が決まっている場合、そのテーマを効果的に伝えるためには、論理的で読みやすい構成を設計することが重要です。イントロダクションで興味を引き、ボディでテーマを深く掘り下げ、コンクルージョンで総括と行動を促すことで、読者にとって価値のある一貫した内容を提供できます。また、リサーチや競合分析、読者リサーチを通じて、信頼性と独自性のある情報を集め、テーマを支えるコンテンツを作り上げることが成功の鍵です。

最初のうちは構成は「起承転結」で考えよう

「起承転結」の構成は、読者の心理的な変化に対応しながら、物語や議論を効果的に展開するためのフレームワークです。

  • 「起」で関心を引き、
  • 「承」で理解と共感を深め、
  • 「転」で驚きを提供して注意を再集中させ、
  • 「結」で納得感と満足感を提供する。

この構成は、人間の心理に沿った自然な流れを持つため、読者を最初から最後まで引きつける力があります。このため、古典的でありながら、現代でも優れた構成法として広く利用されています。

以上の内容について質問がある方はぜひこちらまでお寄せください。「起承転結」にこだわらず、あなたのテーマを最も効果的に主張する構成についてご相談しながらご提案いたします。また出版をお考えの場合は、ご相談の流れをこちらでご確認ください。あなたのテーマを私たちがいかの大切にしながら、多くの読者に受容されるものになるようにお手伝いするか、ということがお分かりいただけるでしょう。

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