自費出版の全て。メリット、デメリット、サギの真実まで。
自費出版と言う出版方法をご存じですか。それは以下のようなあなたの想いを形にする方法です。
あなたは自分の中に大切にしている思い出や想い、あるいは夢はありませんか。あなたが自信を持って取り組んできたことはありませんか。自分の人生で得た経験での中で、子供や孫だけではなく、多くの人にメリットがある。と言うことはありませんか。そしてあなたは自分の人生を「形」にして残したいと思いませんか。高いお墓を買うよりも、本にした方が、あなたのことが多くの人の記憶に残るはずです。
そういう時には、あなたの想いや取り組んできたことを「本」にして残しましょう。
内容によっては、出版社の方でお金を出して出版してくれる場合もあります。しかしそのためには企画書を書いたり、色々と面倒なことが多いのも事実です。そういう手間を省くなら、出版費用を自費で支払う「自費出版」が良いかもしれません。
ここでは「自費出版」をする場合、まず何をすべきか。どのような流れでしたらいいのか。いくらくらいかかるのか。メリットとデメリットは何なのか。「自費出版」にかこつけた詐欺の話もよく聞くがどのようなものなのか。と言った「自費出版の全て」の全てについて解説していきます。
Ⅰ自費出版市場
日本の自費出版市場は、近年著しい成長を遂げています。2022年には自費出版の市場規模が約78億ドルとされています。この市場には、印刷本、電子書籍、オーディオブック、デジタル出版が含まれています。内容も教育、職業、学術セグメントにわたる幅広い出版物が含まれています (PublishingState.com)。
さらに、日本では自費出版が特に人気を集めています。多くの著者が自らの作品を発表する手段として利用しています。例えば、Kindle Direct Publishingではオンデマンド印刷で、個人が低コストで出版できます。これにより、特に専門的なテーマやニッチな市場に向けた出版が容易になりました。
日本の出版市場全体も拡大しています。2024年から2028年の間に19.37億ドルの成長が予測されています。この成長は、コンテンツの多様化やインターネットの普及によるものです (Technavio)。
これらから、日本の自費出版市場は今後も成長を続けるでしょう。多くの新しい著者が市場に参入しやすくなることが期待されます。
Ⅱリタイア後に自分の人生を形に残したいなら自費出版
まず、日本の平均寿命は世界でもトップクラスです。2022年の時点で男性は約81.6歳、女性は約87.6歳でした。 (Ministry of Health, Labour and Welfare)。これによって退職後の人生は長くなり、多くの人がリタイア後の活動に悩んでいます。またOECDのデータでは日本の高齢者(65歳以上)の約80%が退職後も社会に貢献したいと考えています。この背景には、健康で活力に満ちた高齢者が増えていることが挙げられます。 (Oxford Academic)。
さらに、リタイア後に自分の人生を振り返り、自叙伝や回顧録を作成する動機は、単に時間があるだけでなく、自己表現や家族への遺産としての価値も含まれています。世界経済フォーラムの報告によれば、多くの人々が退職後に新しいスキルを学び、自分自身を再評価することを求めていることが示されています (World Economic Forum)。
これらのデータからもわかるように、リタイア後の人生が長くなる中で、自分の人生を形にしたいという希望は自然な流れと言えるでしょう。
自費出版のメリット
- 自由度が高い: 自分のペースで出版でき、内容やデザインに対する完全なコントロールがあります。
- 収益の独占: 販売利益を全て自分で得ることができます。出版社を通さないため、中間マージンがありません。
- 出版の迅速さ: 出版社を介さず、印刷屋とだけ話をするので、迅速な出版が可能です。
自費出版のデメリット
- 費用と手間がかかる: 印刷やデザイン、マーケティングなど、全ての費用を自分で負担しなければなりません。
- マーケティングの難しさ: 知名度が低い場合、売れ行きが低迷することが多いです。効果的なマーケティング戦略が必要です。
- 品質の確保: プロの編集者やデザイナーに依頼しないと、品質が低くなる可能性があります
Ⅲ自費出版の流れとあなたがすべきこと
自費出版の原稿の準備
自費出版の最初のステップとして、原稿の準備は非常に重要です。質の高い原稿が最終的な作品の成功に直結するため、慎重に取り組む必要があります。以下に、原稿準備の具体的なプロセスを詳述します。
1. アイデアの発掘とテーマの設定
- アイデアの発掘:
- ブレインストーミング: 書きたいテーマやアイデアを自由に出し合い、書き留めます。
- リサーチ: 自分が書きたいテーマについて他にどのような本があるのかを調査し、ニーズや市場のギャップを見つけます。
- テーマの設定:
- 具体的なテーマ: 自分が最も情熱を注げるテーマを選び、具体的なテーマに絞ります。
2. 起承転結(話の順番)を考える
自叙伝を書く際に、話の流れを考えましょう。その1番、お手本になるのは「起承転結」の構造です。この流れが最も読者に分かりやすく、感動的なストーリーを伝えることができます。以下に、自叙伝を書く前提で起承転結の流れを詳しく説明します。
1. 起(き): 導入部分
内容
幼少期の記憶と家庭環境: あなたの生い立ち、家族構成、育った環境などを紹介します。この部分では、読者にあなたのバックグラウンドを理解してもらうことが目的です。
具体例
- 背景の設定: 生まれた場所や時代背景を説明します。
- 重要な出来事: 幼少期に影響を与えた出来事や経験を描写します。
- 家族の紹介: 両親や兄弟姉妹との関係や家庭環境について説明します。
方法
- 記憶をたどる: 幼少期の記憶をできるだけ詳細に思い出し、印象深いエピソードをピックアップします。
- 家族や友人にインタビュー: 自分だけでは思い出せないことを家族や友人に聞いてみると、新たな視点が得られます。
- 写真や日記を参考にする: 古い写真や日記を見返すことで、当時の出来事や感情を鮮明に思い出すことができます。
2. 承(しょう): 展開部分
内容
青年期の苦難と成長: 成長する過程で経験した困難や挑戦、学びや成長を描きます。学校生活や初めての仕事、人間関係などが含まれます。
具体例
- 学業と進学: 学校での経験、勉強の苦労や成功体験を描写します。
- 初めての仕事: 初めての仕事やアルバイトでの経験を詳細に説明します。
- 人間関係の形成: 友人や 会社の尊敬できる先輩との出会い、重要な人間関係の発展を描きます。
方法
- 時間軸を作成する: 成長の過程を年代順に整理し、重要な出来事を時系列で書き出します。
- 具体的なエピソードを選ぶ: 特に印象に残っているエピソードや、あなたの成長に大きく影響を与えた出来事を詳しく描写します。
- 感情を伝える: その時々の感情や考え方を具体的に記述することで、読者に共感を呼び起こします。
3. 転(てん): 転換部分
内容
重大な人生の転機: あなたの人生における大きな転換点や危機、驚くべき出来事を描きます。この部分では、物語が大きく動く瞬間を強調します。
具体例
- キャリアの転機: 重要な仕事のプロジェクトやキャリアチェンジなど、大きな職業上の変化を描写します。
- 個人的な危機: 健康問題や家族の危機など、個人的な重大事件を詳述します。
- 発見と学び: 重大な発見や学びがあった瞬間を描き、その後の人生にどう影響したかを説明します。
方法
- クライマックスを選ぶ: あなたの人生の中で最もドラマチックな瞬間や転機を選び出します。
- 詳細に描写する: その瞬間の状況、登場人物、感情の動きを具体的に描写します。
- 影響を説明する: その出来事があなたの人生にどのような影響を与えたか、どのように変化したかを説明します。
4. 結(けつ): 結末部分
内容
自分の道を見つける: 転機を乗り越え、最終的にあなたが見つけた人生の道や達成したこと、現在の状況を描きます。
具体例
- 新たなキャリア: 転機を経て選んだ新たなキャリアや仕事について詳述します。
- 現在の生活: 現在の生活や家族、地域社会への貢献などを描写します。
- 未来への展望: 今後の目標や夢、展望について語ります。
方法
- 現状を振り返る: 現在の生活や状況を整理し、どのようにここに至ったかを明確にします。
- 成功と学びを強調する: あなたが達成したことや学んだことを強調し、読者にインスピレーションを与えます。
- メッセージを伝える: 自分の経験から得た教訓やメッセージを読者に伝え、共感を呼び起こします。
自叙伝を起承転結の構造で書くことで、読者にとって分かりやすく、感動的なストーリーを作り上げることができます。各部分において具体的なエピソードや感情の描写を丁寧に行い、読者があなたの人生に共感し、学びを得ることができるよう心がけましょう。
3. 執筆
1 初稿の執筆:
- 自由に書く: 初稿ではアイデアを形にすることを重視し、細かい誤りやスタイルにはこだわらずに書き進めます。
- 執筆ルーチンの確立: 毎日一定時間を執筆に充てるなど、規則的な執筆習慣を作ります。
2 リライトと改稿:
- 初稿の見直し: 書き終えた初稿を見直し、ストーリーの一貫性やキャラクターの描写に問題がないかを確認します。
- 他者のフィードバック: 信頼できる人やプロの編集者に読んでもらい、フィードバックを受け取ります。
- 改稿: フィードバックを基に原稿を修正し、内容を改善します。
4. 校正と編集
校正:
- 誤字脱字のチェック: 原稿を細かく見直し、誤字脱字や文法ミスを修正します。
- スタイルの統一: 語調やフォーマットの一貫性を確認し、全体のスタイルを統一します。
編集:
- 内容の精査: ストーリーや論理展開の整合性を再度チェックし、不要な部分を削除したり、追加すべき部分を補ったりします。
- プロの編集者に依頼: 自分だけでは見落としがちな点を補うため、プロの編集者に依頼することも検討します。
5. 最終チェック
全体の確認:
最終的に全体を通して読み直し、細部にわたって確認します。
フィードバックの反映:
最後に受け取ったフィードバックを再度反映させ、完成度を高めます。
準備完了:
出版に向けた最終準備を整え、原稿を印刷・製本業者に提出できる状態にします。
Ⅳ自費出版社の選定のポイント
自費出版を考える際、適切な出版社を選ぶためのポイントは以下の通りです。
1 評判と信頼性
過去の実績や評判を確認しましょう。口コミやレビューサイト、作家コミュニティの意見を参考にすると良いでしょう。
2 出版費用とプラン
提供されるプランの詳細と費用を比較しましょう。どのようなサービスが含まれているか、追加費用が発生する場合はどのような状況かを確認します。
3 編集サポート
編集者によるサポートがどの程度受けられるか確認します。プロの編集者による校正やフィードバックは、作品の質を向上させるために重要です。
4 デザインと製本の品質
表紙デザインや製本の品質を確認します。過去の出版物を見て、品質が自分の期待に沿っているかをチェックしましょう。
5 流通とマーケティング支援
出版後の流通やマーケティング支援がどの程度受けられるかを確認します。書店での取り扱いやオンライン販売のサポートがあると、読者に届きやすくなります。
6 契約条件と著作権
契約内容を詳細に確認し、著作権の取り扱いや印税の条件を明確に理解しておきましょう。
Ⅴ出版費用と見積もり
一般的なハードカバーの自費出版について、四六判(127×188mm)で250ページ、デザイナーによる表紙デザイン、数点の写真挿入、500部印刷の場合の標準的な費用の見積もりは以下の通りです。
- 印刷費用
- 250ページのハードカバー書籍を500部印刷する場合、平均的な印刷費用は約50万~80万円です。
- 編集・校正費用
- プロの編集者による編集・校正サービスの費用は、内容の複雑さにもよりますが、約10万~30万円です。
- デザイン費用
- プロのデザイナーによる表紙デザインと内部レイアウトの費用は、約10万~20万円です。
- 写真挿入費用
- 写真のスキャニングや加工、配置の費用として約5万~10万円です。
- 流通とマーケティング費用
- 書店流通やオンライン販売のための登録料、プロモーション費用などが含まれ、約5万~15万円です。
総合すると、これら全てを含めた場合の出版費用は約80万~150万円となります。
Ⅶ自費出版の罠
高額な初期費用の要求:
一部の自費出版業者は、出版に必要な費用として非常に高額な金額を要求することがあります。これには、書籍の編集、デザイン、印刷、流通などのコストが含まれると説明されることがありますが、実際には必要以上の費用を請求される場合があります。
契約内容の不明瞭さ:
契約書において、著作権の譲渡や印税の取り決めが不明確な場合があります。これにより、著者が自分の作品に対する権利を失ったり、予想以上の利益を業者に持っていかれることがあります。
品質の低い印刷と制作:
一部の業者は安価な印刷所を利用して低品質な書籍を作成し、その結果、著者の作品が販売されない場合があります。著者がチェックする機会がほとんどないため、この問題に気づかないことが多いです。
「成功報酬型」のサギ:
「成功報酬型」と称して、販売数量や書籍の受け入れに応じて料金を請求する業者もいます。最初は低額に見えるかもしれませんが、実際には販売が伸びると追加の料金が発生することがあります。
「無料出版」詐欺:
「無料で出版できる」と謳っている業者が、実際には「無料」とは言っても他の形で費用を請求するケースがあります。例えば、特別なプロモーション費用や追加の印刷費用などが含まれていることがあります。
不正な契約条項:
契約において、一度出版するとキャンセルや返金ができないといった不正な条項が含まれていることがあります。これにより、後から問題が発生しても解決できない場合があります。
Ⅷまとめ
自費出版を成功させるには
自費出版を成功させるためには、信頼できる出版社を選び、費用対効果の高いプランを選択することが重要です。また、印刷・デザイン・編集・流通の各費用を明確に把握し、予算を立てることが必要です。具体的な費用見積もりについては、各出版社から詳細な見積もりを取ることをお勧めします。
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