「商業出版」と「自費出版」の誰も書かない真実~「売るために著者の負担はあるか?」篇

はじめに

せっかく書き上げた原稿を、多くの人に読んでもらいたい。これは、すべての著者の願いでしょう。ご存じの通り出版には「商業出版」と「自費出版」という二つの選択肢がありますが、それぞれで著者本人がどこまで労力と費用を使うか、という点が異なります。

しかし商談時には「何もしなくていいですよ」と言われていたものが、実際には自分で書店営業をしなければならなかった。費用はかかりませんよ、と言われてたものが数百万円請求された。などのいわば「サギ」的な話があることが真実です。

そこでここでは、その「真実」を「商業出版」「自費出版」それぞれについて、特に「どうやって販売促進をするのか」ということに絞って解説します。

1. 商業出版:プロの力で販売促進

商業出版とは、出版社が企画・編集・販売までを行い、著者は印税を受け取る出版形態です。出版社は、書店やオンライン販売店への流通、広告宣伝、イベント開催など、販売促進活動に豊富な経験とノウハウを持っています。

1.1 商業出版の販売促進方法

商業出版の場合、原則として出版社が以下の販売促進活動を行います。

  • 書店への営業: 全国約1万3000店の書店に直接営業を行う方法と、月に1回程度FAXで「今月の新刊」などのDMを送る方法が採用されています。
  • オンライン販売: Amazonや楽天などのオンライン書店で販売します。
  • 広告宣伝: 書評、新聞広告、雑誌広告、テレビCMなど、さまざまな媒体で本の宣伝を行います。
  • イベント開催: 著者による講演会やサイン会などのイベントを開催し、読者との交流を図ります。

しかしあくまでこれは出版社が「売れそうな本」「コストをかけても元が取れそうな本」だと判断した場合だけです。

そのような本でない場合は、「オンライン販売」と「FAXDM」以外はほぼ確実に実施されません。さらに「FAXDM」もA4の隅の方に小さな文字で書かれるだけです。

1.2 商業出版の販売促進における著者の役割

商業出版において、建前としては著者は販売促進活動に直接関わることはあまりありません。しかし、以下のような活動を出版社の方から依頼される場合があります。

  • メディアへの露出: テレビやラジオ、雑誌などのインタビューに出演し、本の内容をアピールします。
  • ブログやSNSでの発信: ブログやSNSで本の情報を発信し、読者の興味を引きます。
  • 講演会やイベントへの登壇: 講演会やイベントに登壇し、読者と直接交流します。

これらの活動は、著者の顔や人柄を伝えることで、読者の購買意欲を高める効果があります。

しかしこれらがセッティングされるのは1.1と同様に「売れそうな本」の場合だけです。メディア露出もSNS発信も講演会も、全てお金がかかります。そのお金をかけても元が取れる本の場合だけ、出版社は以上のような販売促進を行います。

というように出版社も企業ですから、利益が出ないことはしません。それでも、一応商業出版から出版できたのなら、ラッキーだったと思った方がいいでしょう。なぜなら、商業出版なのに、出版費用を著者に一部(または恐らく全額)を負担させる「著者買取」というものがあるからです。これについては1.3で詳しく述べます。

1.3 商業出版に騙されるな:「著者買取」というサギ

商業出版は先ほど書いたように、出版社が費用を全額負担して出版する方法です。

しかしそれはあくまで、内容が新人賞などを取った、著者がどこかの大きな団体の会長など自分の「マーケット」を持っている、今とても旬なテーマを扱っている、自分が「大学教授」「医師」「クイズ王日本1」などの肩書を持っている、SNSのフォロワーが1万人以上いる、など「売れそうな本」の場合だけです。

以上のどれにも当てはまらない著者の本は、よほど編集者の勘で絶対ニーズがある、と思われるか、たまたま口コミで火がつくか、という「奇跡」が起こらなければ売れません。当然売れない本にコストをかけても赤字になるだけですから、出版社は出版しません。

しかし、ここに1つだけ例外があります。例外といっても、対象は大部分の「著者」です。それが「著者買取」という「悪魔の」制度です。

これは出版社側からアプローチしてくる場合の内容としては「とてもいい本なのでぜひ出版したいが、やはり利益が出るかどうか未知数である。そこで著者であるあなたが出版数の一部を自分で買い取ってくれれば、赤字のリスクが減るので出版できる」というものです。たとえば1500円の本を1000部出版するとした場合に、その3割の300冊を45万円分を自分で買って、自分の努力で売ってくれないか、ということです。

さらに「サギ」だと断定する理由は、以上の例のように、新人作家であれば、せいぜい初版は1000部から3000部です。1500円の本なら総額150万円~450万円です(実際はこの中に出版社の利益も入っていますから、原価ベースで言えばもっと費用は安いはずです。その3割なら45万~150万円です。にも関わらず、出版社が提示する「著者買取費用」300万~500万円なのです。計算が合わない金額を平気で請求するのです。

つまり、著者買取は、何割かを自分で買ってもらうのではなく、出版費用の全額を著者に負担させるということなのです。これによって出版社は0円の費用で出版でき、まかり間違って何冊か売れれば、その売上の全額(普通は出版コストがかかりますが、既にそれは著者が払っています)が利益として出版社の懐に入ってくるわけです。もう少し細かく言うと、買取費用を出版社は「その本の定価✕冊数」で出してきます。しかし定価の中には出版社の利益も入っていますから「著者買取」の金額の中からも利益が上がります。

つまり「著者買取」は「出版」が目的ではなく、著者からお金をむしり取る「サギ」なのです。言葉を換えるなら「出版」は読者が「客」ですが、「著者買取」は著者を「客」にして、それ自体をビジネスにしているのです。

さらに言えば、3000部刷るからその3割と出版社が言っても、それ自体がウソの可能性もあります。つまり実際には500部しか刷らないのに3000部刷る、というのです。この場合は、2500部分の出版費用(原価)も発生していませんから、「著者買取」で入ってくるお金は、本当に丸ごと出版社の利益になってしまいます。

このような会社が仮に本当に1000部刷ったとしても、先にあげたような「販売促進」をするわけがありません。せいぜい出版時に、書店に数冊づつ、それも1万3000店と言った「全書店」ではなく、懇意の書店十数店舗に数冊配架するだけです。書店の方も、店頭などの売れる場所には売れそうな本を置きますから、せっかく配架されたあなたの本は、店の奥の方に淋しく置かれ、そして1週間程度で「返本」されるだけなのです。

これが「悪徳な」商業出版社の「著者買取サギ」です。もちろんすべての出版社がこのような「サギ」をしているとは思いません。しかし私自身が「著者」として何社かの商業出版社に打診したところ、全ての会社が明らかにこのような「著者買取サギ」で私から金をだまし取ろうとしているな、と感じました。

ですから商業出版社から本を出すという場合は、くれぐれもご用心ください。

2. 自費出版:自分で売るための努力

自費出版とは、著者が費用を負担して自分で本を出版する形態です。販売促進活動も著者自身で行う必要があります。

2.1 自費出版の本を自分で販売促進するには

自費出版の場合、著者は以下の販売促進活動を行う必要があります。

  • オンライン販売:Amazonや楽天などのオンライン書店や、で販売します。
  • SNSでの発信: ブログやSNSで本の情報を発信し、読者の興味を引きます。
  • イベント開催: 著者による講演会やサイン会などのイベントを開催し、読者との交流を図ります。
  • メディアへの露出: テレビやラジオ、雑誌などのメディアに取り上げられるよう、積極的にアプローチします。
  • 口コミ: 読者に本の感想をSNSなどで拡散してもらうよう、お願いする

しかし以上のことは当然ですが、無料ではできません。

オンライン販売は「自費出版専門」のサイトもありますから、そこに出品すれば、費用は0円です。しかしAmazonは個人の出品を受け付けていません。楽天やそのほかのオンライン書店も同様です。それでもオンライン書店で販売したければ、代行会社に依頼するしかありませんがあります。費用は1冊30%程度のマージンを支払って、オンライン書店で販売してもらうことになります。

またSNSもフォロワーが1000人程度なら、そこでアピールしてもほぼ反応はありません。

もちろんあなたがフォロワーとかなり密接な関係を作り、個々のフォロワーとメールのやり取りなどをしているなら買ってくれる可能性は高いでしょう。しかし、何となく趣味が近いから、フォローしてもらったお礼のフォロー(これをフォロー返しと言います)などの理由でフォローしてくれている人は、よほど内容に興味を持たない限り買ってはくれません。

それでもSNSで告知したければ、SNS広告を打つか(自分で手続き、広告制作をすれば、最低費用は月2万円くらいです。これも代行会社に頼んだり、広告を外注すればその分だけ費用が発生します)、SNSのフォロワーを増やしてくれる会社もありますから、そこに依頼するしかありません。

イベント、メディアも同様です。単にイベントを開くのなら、どこかの自治体の会場を数千円で借りればできますが、「告知」「集客」がなければ観客0人の前で後援することになります。つまり、チラシを作る。図書館や近くの書店に頼んでチラシを置いてもらう。地域のコミュニティ誌に広告を出す。などが必要です。しかしこれも全てお金がかかります(かからないのは、図書館、書店にチラシを置く、くらいですがその分必死に営業して頼み込む必要があります)。

2.2 自費出版は宣伝も自分でしなければならない

自費出版では、宣伝広告自体、自分でしなければなりません。つまり自分でお金を払うか、汗を流すかしなければ自宅にはいつまで経っても本の段ボールの山です。

具体的には以下の内容です

  • 宣伝広告:SNS、新聞、雑誌などに広告を打つ
  • 書店営業:自分で書店回りをして本を紹介し、置いていてくれるように頼む。
  • 口コミ:知り合いに電話などで本の紹介をして、買ってもらう。

これらを実行するには、代行会社、広告代理店に依頼するか、実際に宣伝を行っている会社に直接依頼する、書店を1軒1軒回る、ということなので、そこで見積もりをとるしか、費用は分かりません。ただ私の体験から、だいたいの費用感をお伝えしておきます。

宣伝広告

SNS:たとえばX(以前のTwitter)であれば何回表示させるかで料金が決まります。月に5万回表示させると5冊程度は売れます。その費用は5万円くらいです。

新聞:よく1面の下に書店ばかりの広告が載っている日がありますが、あそこに乗せるためには1回100万円程度です。

雑誌:雑誌の中の載せる場所にもよります。ページの外側に縦に細く載せる広告で1回10万円程度。半ページに載せると1回100万円程度です。ただし雑誌の場合は無料でも載せられる可能性があります。それは「書評欄」で取り上げてもらうことです。しかしそういう本はそれこそ山ほど担当者に送られてきますから、よほど目立つような包装にするか、添付する内容を面白くするか、といった努力が必要です。

書店営業

これは他社でもしている通り、自分が営業マンになって書店を回り、棚に並べてもらえるようにアピールすることです。ただしこれも大公開社があり、月3万円程度で請け負ってくれますが、成功報酬ではないので、どの程度熱心に、どういう内容で営業してくれているかはわかりません。

口コミ

これが最もお金のかからない方法ですが、一方で1番やりにくいものです。友達に自分の作品をお金を出して買ってもらう、というのはよほど図々しくなければできるものではありません。通常は知り合いにはただであげるものです(つまり「献本」です)。ですから、もしも口コミを狙うなら、知り合いの多そうな友人に1冊献本して、「面白かったらみんなに紹介して」というのを、できる限り幅広く実施する程度でしょう。

終わりに

いかがですか。

商業出版も自費出版も「売る」という点ではなかなか難しいのが事実です。

その中でも比較的可能性が高いのはやはりオンライン書店での販売でしょう。しかし個人ではここに載せられません。だから代行会社に頼るわけですが、それも1件30万円以上しますから、結構な費用です。

その点、私たちクリエイティブ集団 COW AND CATでは、「本を出版すること」と「Amazonで販売すること」をセットにして、最低料金5万円から承っています。もしも本をリーズナブルな価格で出版したい、と思われたら、ぜひ1度ご連絡ください。こちらからどうぞ