プロ編集者が教える「商業出版で売れる原稿」の書き方 ❶「テーマ」の作り方

商業出版で売れる原稿を書くためのステップを丁寧に説明する1回目です。

はじめに

商業出版の世界は、非常に競争が激しいです。日々数多くの原稿が出版社に持ち込まれています。その中で、如何にして自分の原稿を際立たせ、編集者や出版社の目に留めるか?それが作家としての成功の鍵となります。では、どのような原稿が商業出版で売れるのか?その答えは、単に魅力的なストーリーや秀逸な文体、ではNGです。それだけにではなく、読者の心をつかむ「仕掛け」を付ける必要があります。

本記事のテーマは、商業出版で成功するための原稿の書き方についてです。プロの編集者がその秘訣を余すことなくお伝えします。どのようなテーマが現在の市場で求められているのか。どういった構成やスタイルが読者を引き込むのか。そして編集者が特に重視するポイントとは何か。これらを徹底的に解説し、あなたの原稿が編集者の目に留まるようにします。商業出版界で名を成す準備ができるこの記事を、ぜひ最後までしっかりご覧ください。

売れる本のためのテーマ出し

商業出版社に企画を持ち込む際には原稿のテーマがまず勝負です。しかしそのためには市場のトレンドと出版社のニーズを両方を考慮する必要があります。以下に、その方法と理由を述べます。

1. 市場のトレンドを把握する

市場的な理由:

  • 読者の関心を反映: 現在の流行っているものを後追いすれば売れやすいです。それらはプロモーションも容易なので、成功の確率が高くなります。
  • 競争力の確保: トレンドに沿ったテーマは賞味期間が短いです。ですからいかに早く原稿化できるかが勝負です。

方法:

  • 市場調査: ニュースサイト、SNS、書籍のベストセラーリストなどを活用しましょう。現在の読者の関心や人気のトピックを調査します。
  • 競合分析: 同ジャンルや同テーマの書籍の書評や読者感想文をチェックしましょう。彼らがどこに惹かれているか把握すれば売れるテーマが見つかります。

2. 出版社のニーズを理解する

商業出版社の立場としての理由:

  • 出版方針との一致: 各出版社にはそれぞれの出版方針やターゲット層があります。出版社のニーズに合ったテーマであれば、企画が受け入れられやすくなります。出版社が求めるジャンルやスタイルに合わせれば、出版の確率が高まります。
  • 収益性の重視: 商業出版社は収益性を重視します。ですから売れる可能性が高いテーマには前向きな姿勢を持ちます。市場での成功が見込まれるテーマは、出版社にとっても魅力的です。

方法

  • 出版社のリリース情報の確認: 出版社の公式サイトやプレスリリースを確認しましょう。再販本、新刊本、イチオシ本などから出版社が「売れる」と判断の傾向が分かります。
  • 編集者とのネットワーキング: 編集者や業界関係者とネットワークを作りましょう。そこで出版社のどのような企画やテーマの情報をこっそり収集しましょう。

3. 「売れる本」は独自性と差別化ができている

市場的な理由

  • 競争の中で目立つ: 競争が激しい市場では、独自性や差別化が「売れる」カギです。他の企画と差別化できるテーマやアプローチは、出版社の関心を引きやすくなります。
  • 読者の興味を引く: ユニークで新しい視点やアプローチは、とりあえず目を引きます。それは売れる本の条件です。

方法:

  • 独自の視点やアプローチを提案: 人気のあるテーマに敢えて反抗しましょう。独自の視点や新しいアプローチが差別化になり、売れるきっかけとなります。
  • クリエイティブな提案: アイデアを創造的なワンフレーズにしましょう。それが他の企画との差別化につながり、出版社が「売れる」と判断します。

4. ターゲット読者の明確化

市場的な理由:

  • 明確なターゲット層: ターゲット読者を明確にしましょう。そうすれば出版社がマーケティング戦略を立てやすくなり、企画の成功率が高まります。

方法:

  • ターゲット層の定義: ターゲットを明確にしましょう。そしてその心理や購買調べれば、その層に適したテーマやアプローチが分かります。
  • 読者ニーズの調査: 読者層のニーズや興味を調査します。それに基づいたテーマを選ぶことで、企画の成功率を高めます。自分で調査するのは不要です。商業出版社のリリーズなどをこまめにチェックすれば、そのような記事にぶつかります。

これらの方法を駆使して原稿のテーマを決定します。そうすれば商業出版社により魅力的な企画を提供し、成功の確率を高められます。

【各論】編集者とのネットワークの作り方

上で挙げたテーマ出しの仕方の中で、最もハードルが高いのが編集者とのネット―ワーク作りです。このネットワークがあれば、出版社の望むテーマを探れる。今すでに書き終えた原稿を読んでももらい修正点を聞く。原稿を売り込む。その編集者の扱い範囲でない場合はほかの編集者の紹介をもらう。などあなたの作家的可能性が格段に広がります。

そこでここは【各論】として「編集者とのネットワークの作り方」をご紹介します。

1. 業界イベントへの参加

  • 方法: 以下のものには積極的に参加しましょう。書籍関連のイベントやフェア(例: 東京国際ブックフェア、ビジネス書フェア)。作家や編集者を招いたトークショー。出版関連のセミナーやカンファレンス。
  • 利点: 編集者や出版業界のプロフェッショナルと直接話せます。名刺交換ができればOKです。

2. 業界団体やネットワーキンググループの加入

  • 方法: 出版業界の団体や作家組合に加入しましょう。定期的なイベントや活動の案内が来るので参加しましょう。
  • 利点: 業界内でのネットワークを広げることができ、編集者との接触の機会が増えます。

3. SNSやオンラインプラットフォームの活用

  • 方法: Twitter、LinkedIn、Facebook などのSNSで編集者や出版社の公式アカウントをフォローし、業界関連の投稿やコメントに積極的に参加します。LinkedIn でのプロフェッショナルなつながりも有効です。
  • 利点: デジタル上での交流を通じて関係を築くことができ、最新の業界情報や編集者の関心を把握することができます。

4. メールや手紙でのコンタクト

  • 方法: 編集者や出版社のスタッフに対して、具体的な質問や企画の提案、感謝の気持ちを伝えるメールや手紙を送ります。
  • 利点: パーソナルな接触ができ、編集者に自分の関心や意見を直接伝えることができます。

5. 読書会や文学イベントの主催または参加

  • 方法: 読書会や文学関連のイベントを主催し、著名な編集者や作家をゲストとして招待する、または参加する。
  • 利点: 編集者と直接的な接触ができる機会を作り、関係を深めることができます。

9. 出版物や業界ニュースのチェック

  • 方法: 定期的に業界のニュースや出版物をチェックし、編集者の関心や出版社の動向を把握する。
  • 利点: 編集者の興味や現在のトピックを理解し、関連性のある提案をすることで、アプローチが効果的になります。

これらの方法を活用しながら、編集者との関係を築くことで、より有利なポジションを確保し、出版企画の成功につなげることができます。

【各論】差別性と独自性を兼ね備えたテーマの探し方

またもう1つ「言うことは分かるが実行の仕方が分からない」こととして「差別性と独自性」を兼ね備えたテーマをどうやって探すか、という問題があります。そのようなものが簡単に見つかれば、誰でも大ヒット作家になれます。そこでここでは、その企業秘密とでもいうべき秘訣をこっそりお教えします。これさえ身に付ければ、あなたは常に時代の先端をいく作品をかけるでしょう。それはつまり競合のいない大地を突き進むようなものです。

1. 自分の興味や経験を掘り下げる

  • 方法: 自分が熱心に興味を持っている分野や、過去の経験から得たユニークな視点を掘り下げてみます。個人的な経験や専門知識を基にしたテーマは、他にはない独自性を持つことが多いです。
  • 目的: 自分の情熱や専門知識を反映させることで、オリジナルで差別化されたテーマを見つけるため。

2. 読者のニーズを理解する

  • 方法: 読者の声やニーズを調査するために、アンケート調査やオンラインフォーラム、ソーシャルメディアでのフィードバックを収集します。特定のジャンルやテーマに対する読者の関心や不満を把握することが重要です。
  • 目的: 読者が求めるテーマや内容を理解し、そのニーズを満たすことで、商業的に成功するテーマを見つけるため。

3. 異なるジャンルやメディアからのインスピレーションを得る

  • 方法: 映画、テレビ、音楽、アートなど、他のメディアからインスピレーションを受けることで、独自のテーマやアイデアを見つけることができます。異なるジャンルやメディアの要素を組み合わせることで新しい視点が得られることがあります。
  • 目的: 異なるメディアやジャンルの要素を組み合わせることで、新しい独自性を持ったテーマを開発するため。

4. 他の作家やクリエイターとのディスカッション

  • 方法: 同業者やクリエイターとのネットワーキングイベントやワークショップに参加し、意見交換やアイデアのブレインストーミングを行います。これにより、新しい視点やアプローチが得られることがあります。
  • 目的: 他の作家やクリエイターとの交流を通じて、自分では思いつかなかった独自のテーマやアイデアを発見するため。

5. 過去の成功事例や失敗事例を分析する

  • 方法: 過去に商業出版社に企画を出して通ったものと没になったもの、あるいは売れた作品とそうではない作品を分析し、なぜそれが成功または失敗したのかを考察します。成功した作品の要素や失敗の原因を学ぶことで、独自性のあるテーマを見つける手助けになります。
  • 目的: 過去の事例から学び、自分の作品に取り入れるべき成功要素や避けるべき問題点を理解するため。

情報収集

テーマが決まったらそこに肉付けをしましょう。そのためにはテーマに関する情報をできる限り集めることが必要です。

そこでここでは情報収集の方法をお伝えします。

1. ニュースアグリゲーターの活用

  • 方法: Google ニュース、Yahoo! ニュース、Feedly などのニュースアグリゲーターを利用し、興味のあるトピックや業界の最新情報を収集します。
  • 利点: 最新の情報やトレンドを素早くキャッチできる。

2. 専門ブログやウェブサイトのフォロー

  • 方法: 自分の専門分野に関連するブログやウェブサイトを定期的にチェックし、興味深い記事や情報を保存します。
  • 利点: 深い専門的知識やニッチな情報を得られる。

3. SNSでの情報収集

  • 方法: Twitter、LinkedIn、Facebook などのSNSで関連するハッシュタグやキーワードをフォローし、専門家や業界の意見を追います。
  • 利点: リアルタイムでの意見や議論に触れることができる。

4. ニュースレターやメールマガジンの購読

  • 方法: 関心のある分野や業界のニュースレター、メールマガジンに登録し、定期的に情報を受け取ります。
  • 利点: 手間をかけずに専門的な情報を集めることができる。

5. 商業出版社の書籍や学術論文の読書

  • 方法: 関心のあるテーマに関連する書籍や学術論文を読み、深い知識を得る。
  • 利点: 広範な知識や理論的な背景を得ることができる。

6. インタビューやアンケートの実施

  • 方法: 専門家や対象となる読者層に対してインタビューやアンケートを実施し、直接的な意見やデータを収集します。
  • 利点: 実際の意見やデータを基にした情報を得られる。

7. セミナーやカンファレンスへの参加

  • 方法: 業界のセミナーやカンファレンスに参加し、最新のトピックや専門家の意見を収集します。
  • 利点: 業界の最新情報やネットワーキングの機会を得られる。

8. オンラインフォーラムやコミュニティの利用

  • 方法: Reddit、Quora、専門家のコミュニティなどに参加し、トピックに関する議論や質問をフォローします。
  • 利点: 多様な意見や経験に触れることができる。

9. デジタルツールの活用

  • 方法: Evernote や Notion などのデジタルノートツールを使って、興味のある情報を整理し、メモやアイデアを管理します。
  • 利点: 情報の整理や検索が簡単で、効率的に活用できる。

10. データベースの活用

  • 方法: JSTOR、PubMed、Google Scholar などの学術データベースを活用し、関連する研究や統計データを収集します。
  • 利点: 信頼性の高いデータや研究結果を得られる。

さあここまでで、あなたは確実に売れそうな原稿のテーマとそれに関する情報を手に入れました。次はそれをどう読者の心に刺さるように構成化するかです。

これについては来週の週末のブログでご紹介します。まずは上で書いたことの中からできそうなことを試してみてください。

ここまでのことで分からない点があればぜひこちらまでお問い合わせください。

またテーマを検討する方法の1つに、私たちクリエイティブ集団COW AND CATの追及しているマーケティングの考え方がこちらのページに詳しく述べてあります。良かったらそれも参考にしてみてください。